テレビ東京「アラサーちゃん 無修正」「昼めし旅~あなたのご飯見せて下さい~」工藤里紗プロデューサー 真面目にやるだけじゃなく、ちょっとエンターテインメントに問題提起(G-press)

壇蜜さんの主演ドラマ「アラサーちゃん 無修正」で、女性のセックスや恋愛観を赤裸々に描き、平日昼帯の旅番組「昼めし旅~あなたのご飯見せて下さい~」では、普通の人たちの食をリアルに紹介。そんな両極端な番組を制作するのは、テレビ東京の工藤里紗プロデューサーだ。好調を続けるテレ東を担う若き女性プロデューサーに、テレビ界を生き抜く秘訣(ひけつ)とテレ東的バラエティーの作り方を聞きました。

どんな学生時代でしたか。

 修学旅行の時にビデオをいつも回しているビデオ小僧みたいな感じでした。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでは、一応メディア系のゼミに入っていましたが、ダンスばかりの毎日でした。中学ごろまで10年くらいバレエをやっていて、その後、ヒップホップなどの音楽が好きになって、ストリートダンスを始めました。大学に入ってからは週5日練習で、土日も午前9時くらいから練習していました。大学のサークルや大学以外でもチームを組んでクラブのイベントに出たり。頭もベビーアフロみたいなのにしたり、全部編み込みにして三つ編みだらけだったり。大学4年間はそんな感じでしたね。

なぜテレビを目指したのですか。

 小学校の時に映画「ダンス・ウィズ・ウルブズ」を見て、ケビン・コスナーが主演・監督をしていて、なんだか世の中にはすごい人がいるものだなって思って。なぜか分からないですけど、映画を作る人になりたいなと思って、映像系を探していたんです。現場にいられたらいいなと思っていて、映画、広告、テレビを受けて。いろいろお話を聞いて、映画会社は、興行の方にいったりして、必ずしも映画を作れるわけではないし、広告はクリエイティブに行けるか分からない。たまたまその年のテレビ局の採用では、クリエイティブ総合職というものがあって、クリエイティブで入れば報道か制作かスポーツといった制作現場に配属してもらえるだろうと思いました。

最初からバラエティーだった?

 最初は「ペット大集合!ポチたま」のADでスタート。他の番組と比べたらましな方だったんですけど、慣れないスケジュール感とか、メンタル的には大変でした。その後、「モーニング娘。」の番組「ハロー!モーニング。」を担当しました。いわゆるアイドル番組なんですが、グルメリポートも撮りにいくし、スタジオでセットを組んで「人間だるま落とし」とかもやるし、ゲームあり、歌あり、コントあり、ロケありと、結構そこでいろいろ経験できましたね。

AD時代の苦労は?

 テレビ業界を目指していたので、マスコミのゼミに行ったりして、本気でいすが飛んできたりすると思っていた。そんなことはなかったですが、怖いレベルがいい意味で高かった。入社してからも、「こんな目に遭ってさ」という先輩の話を全部真面目に聞いて、ガードし過ぎていました。常にいすが飛んでこないように動いていたり、食事に誘われても、「いえ、これこれがあります」といって仕事したり、ものすごくバリアを張っていました。ご飯を食べてる=楽をしている=やられる可能性がある=絶対にすきを見せてはいけない、と思っていたんですね。ちょっと可愛げがなくて、損していたかもしれません。「ここは自衛隊じゃない」と先輩に言われたこともありました。

ディレクターになってからは?

 「ハロー!モーニング。」でADとディレクターと両方やらせてもらって、勉強になりました。2年目の時、歌番組の「Melodix!(メロディックス)」で、初めて歌を撮らせてもらって、チャンスに恵まれていた。すごく早かったんですが、先輩やプロデューサーにいいねと言われて結構自信になりました。ダンスをやっていたので、曲のどこで切ると面白いとか、アクセントにするといいとか、ちょっと共通するところがあって、それが生きたのかなと思います。その後、自分の番組を持つようになっても、自分だけが女性ディレクターだったりすると、なめられちゃいけないと思って、「シャキーン」って“ファイティングポーズ”を取っていました。社食に行こうと誘われても、「大丈夫です」って。ご飯も行きません、トイレも行きませんって、そんな人はいないのに……。1年目が一番シャキーンが強くて、だんだん打ち解けていきましたけど。

順風満帆ですが、壁に突き当たったのは?

 (ドキュメントバラエティーの)「奥さまは外国人」を担当しました。総合演出は、看板番組「田舎に泊まろう!」もやっていた五十嵐洋文さんで、当時のテレ東では“将軍”みたい人の下に兵士として参戦しました。外部の制作会社の一員となって参加していたので、アウエー感もすごいし、ディレクターになった時のプレッシャーもあった。実在する外国人妻の人生を紹介する再現ドラマも作るんですが、例えば、戦後間もない頃の電車とかを再現するために、似ているものを探すけれど、ない。出せども出せども違うと言われて、スケジュールもタイトで、追い込まれて初めて逃亡しようと思いました。

どこで乗り越えましたか。

 スペシャルの回の大ネタをやらせてもらうことになったんです。ルーマニア人の女性と日本の外交官の男性が出会って、恋に落ちた時に、第二次世界大戦が勃発して、その女性はしばらく軟禁状態になって、そこからソ連に渡って、シベリアの収容所に入れられて、そこでもいろいろあって、ようやく青森・弘前にたどり着いて、そこで戦後を迎えて……っていう人生の再現ドラマを撮りました。昔の資料を全部読み、ご本人は亡くなっていたので、お嬢さんや親族から話を聞いて、台本を作り、軍服、銃、外国人キャストを用意して、収容所の再現や青森のロケなど、全部過去のことで、映画レベルの壮大なドラマなので、求められるから応えようと思って精いっぱい頑張って作りました。出演者も泣いてくれて、数字もよかった。やり切った!と思ってたら、予算がかかり過ぎて、「お前はテレ東のスピルバーグか!」って怒られました。予算という概念がなかったんですね。とにかく大変でこの時期の記憶がない。電車に乗って、このままどっかにいこうかと、もうろうとしたこともありましたが、ゴールデンのメインネタをやらせてもらって自信になりました。

最初に自分でプロデュースした番組は?

 「極嬢ヂカラ」です。女性に向けた深夜番組というのが今までなくて、自分が帰宅するのが深夜だったので、一つくらい自分向けの番組があってもいいのではと思って、プロデューサーデビューで、キャスティングも演出も担当しました。特番で2回やってレギュラー化しました。ガールズトークというのは今まであるけど、ふわふわしたガールズトークではなく、もっと突っ込んだものが好きなので、恋バナもあったけれど、体に関するものが多かったですね。スタッフはほとんど女性だったので、会議でも「生理の時、大変じゃない? ナプキンですか? タンポンですか?」と聞いて、「意外とタンポン少ないんだなあ。番組で聞いてみよう!」ってなったり、誰かが海外に行って「ハワイのタンポンめっちゃ可愛いじゃないですか? 外国のタンポン集めてみよう」ってなったり、社内の男性の方はどん引きでしたが、女性からの支持率は高かったですね。

女性の本音といえば、壇蜜さん主演のドラマ「アラサーちゃん 無修正」も企画されたんですね。

 原作が男性誌の「週刊SPA!」で連載されているんですが、単行本は7割が女性が買っているそうなんです。その単行本の帯に壇蜜さんが出ていて、本の中で、著者の峰なゆかさんと対談していて、壇蜜さんが「ドラマ化されるなら、私がやってみたい」と言っていたので、壇蜜=アラサーちゃんというアイデアは先にあったんです。いろいろラッキーが重なって実現できました。
 

ネットの可能性は?

 テレビがこれからも面白くなっていくのに欠かせない要素となっていくので、そこでの実験とかは、予算がスピルバーグにならない限りはなんだってやってみたらいいと思う。ただ、ネットで話題になるからといって、直接視聴率につながるとは限らない。ツイッターで爆発的に伸びる番組でも、視聴率はあれ?ということがあります。ウェブ動画は簡単に、短くして、逆にあまり手を加えないようにしている。カッコいい編集をしたり、すごい音楽がついたりはせず、ひょいって撮った30秒ですみたいな。ス「アラサーちゃん 無修正」はネットとの親和性が高い感じがしました。そもそも4コママンガなのですごくイージー。パッと見てすぐ読めちゃうので、ネットは隙間(すきま)で見られるので、そういう感覚が生きています。

テレ東の旅ものは人気ですが、地上波の平日帯番組の「昼めし旅~あなたのご飯見せて下さい~」を担当されてますよね。

 裏が豪華キャストのバラエティーが多いので、いろいろ試してそうなりました。昨夏、友近さん司会で「ダンナの居ぬ間に……」という女性ばかりで主婦向けのトークバラエティーを特番で1週間やって、結構面白かったんですが、昼のテレ東の視聴者はそこにはいなかった。相談室バージョンとか、旅ものとか、1週間ごとで試した時に、旅っぽいものがよかったので、そこに企画を乗せたんです。

他局の視聴者とは違う?

 主婦の方はもちろんですが、年配の男性でおうちにいる方も結構います。他が完全に主婦向けの番組だから、結構男性を意識してます。レシピとかは女性を意識しますが、男の人も楽しめるように、旅の要素を入れて。旅ものの特番でディレクターをやった時、ワンカット、ワンカット自分が思うよりも長く撮れって指導されました。例えば、部屋を紹介する時も、7~8秒以下のカットで「パンパンパン」という編集ではなく、ゆったりとした気分を味わってもらうとか。それは「昼めし旅」で意識してやっています。画面も、お年寄りに優しく、うるさくないようにごちゃごちゃテロップ入れず、赤も使うけど和風の赤にして、字は大きく。また、ごちゃごちゃ効果音を入れずに、70、80年代の懐かしい曲を使う。ナレーションもゆっくりで、入らなければ削るか、映像を延ばすか。出てくれているリポーターの方には失礼かもしれないけど、演者よりも食べ物とか出会う人、場所が大事。リポーターは案内人だから、そんなに目立たなくていい。他局でもいろんな人が出ている番組があるので、コンビなら“じゃないほう”芸人をお願いして、申し訳ないけど、リポーターの方が目立たないように。華やかなのは他にいっぱいあるから、引いて、引いて、薄めて、薄めて、謙虚に、謙虚にしています。

これからやりたいことはありますか。

 「アラサーちゃん 無修正」で、今までのバラエティーで培ったものを生かしたものができたので、今度は自分の経験値で、女性として、ママになっての経験を生かしたい。「大竹まことの金曜オトナイト」で、結構ギリギリなことをやっている。真面目にやるだけじゃなくて、ちょっとエンターテインメントにしながら問題提起していくというのはずっと意識していきたい。

これからテレビ業界を目指す人にアドバイスを。

 大学のうちに長期の海外旅行には絶対行った方がいいと思います。社会人になったら絶対に行けないから。今でも行ったらよかったなと思う。テレビを目指す人には、幅広くいろんなものに興味を持つ人がいいなと思います。特殊能力はいらない。スーパーマンが一人で番組を作るわけではないので。専門学校、資格、というより、なんでも番組作りにつながると思う。飲みに行く。恋をする。バイトする。サークルを頑張る。おばあちゃんに会いに行く。そういうことがすべて生きるのがテレビだと思う。それぞれ、いろんなことを楽しんで毎日を生きていければいいと思います。

文・写真 堀部 友里

プロフィル

 くどう・りさ 2003年に入社後、「ありえへん∞世界」「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」のディレクター、「極嬢ヂカラ」「大竹まことの金曜オトナイト(BSジャパン)」ドラマ「アラサーちゃん 無修正」昼ベルト「昼めし旅~あなたのご飯見せて下さい!」などの演出・プロデューサーを務める。3歳の息子のママとしてたまに“鬼”に変身!?

インタラクティブ・プログラム・ガイド(IPG)のG-pressより
※この記事は下記メディアに掲載されました。
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